地図で見ると、シンガポールは小さな都市国家に見えます。
しかし実際に訪れてみると――
この国には世界を変えた植物研究の歴史が残っています。
近代ゴム産業を生み出した研究拠点。
19世紀の英国式庭園。
熱帯植物の巨大コレクション。
それらが一体となった場所が――
シンガポール・ボタニック・ガーデン(Singapore Botanic Gardens)です。
2015年、ユネスコ世界文化遺産に登録。
都市の中心にありながら、原生林まで残る巨大植物園です。
シンガポール観光では
マリーナベイやガーデンズ・バイ・ザ・ベイが有名ですが、
世界遺産に登録されているのはこちらの植物園。
歴史・自然・都市文化が重なった
シンガポールを代表する場所です。
シンガポール・ボタニック・ガーデン(Singapore Botanic Gardens)
2015年に世界文化遺産に登録
なぜ世界遺産になったのか
この植物園が評価された理由は
単なる庭園ではないことです。
19世紀後半、この場所では
天然ゴムの研究が行われました。
ブラジル原産だったゴムの木を
東南アジアで栽培できるように改良し、
さらに
効率的なゴム採取技術を開発。
その結果
・マレー半島
・シンガポール
・インドネシア
でゴム農園が広がり、
世界のゴム産業の中心が東南アジアへ移動しました。
当時の急成長産業だった
自動車タイヤ産業を支えたことから、
この植物園は
近代産業の発展に貢献した研究拠点
として評価され
世界遺産に登録されています。
こうした歴史的景観と植物研究の役割が評価され、
世界で初めての「熱帯植物園」の世界遺産として登録されました。
園内の広さ
敷地は 約82ヘクタール。
これは
東京ドーム約17個分に相当します。
南北に広く、
すべて歩くと 3〜4時間程度かかる規模です。
園内には
・熱帯雨林
・英国式庭園
・研究施設
・博物館
・植物コレクション
などが広がっています。
また
47本の木が国指定ヘリテージツリーとして保護されています。
シンガポール植物園(Singapore Botanic Gardens)
住所:1 Cluny Rd, Singapore 259569
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 営業時間 | 5:00〜24:00 |
| 定休日 | なし |
| 入園料 | 無料 |
| ナショナル・オーキッド・ガーデン | 大人 15 SGD / 学生10 SGD / 子供3 SGD |
| 公式サイト | https://www.sbg.org.sg |
ナショナル・オーキッド・ガーデンのチケットです。


園内エリア
植物園は大きく3つのエリアに分かれます。
タングリンエリア(Tanglin Gate)
植物園のメイン入口。
歴史的庭園が集中しています。
中央エリア
ナショナル・オーキッド・ガーデンなど
見どころが多いエリア。
ブキット・ティマエリア
原生林が残る自然エリア。
各ゲートの徒歩所要時間は、下記のとおりです。
- タングリンゲート~ナショナル・オーキッド・ガーデン(約12分、800m)
- タングリンゲート~ナッシム・ゲート(約20分、1.6㎞)
- ナッシムゲート~ナショナル・オーキッド・ガーデン(約8分、660m)
- ナッシムゲート~MRTボタニックガーデン駅(約10分、1.1㎞)
散策ルート(実際に歩いたルート)
私は
MRTボタニックガーデン駅 → オーキッドガーデン → ジンジャーガーデン → タングリンゲート
のルートで歩きました。
距離は長いですが、
景色が良く散策が楽しいルートです。
世界遺産の標識
MRTボタニックガーデン駅の近くには
ユネスコの世界遺産プレートがあります。
ここは多くの観光客が
写真を撮る定番スポットです。

タングリンゲート
ここからナショナル・オーキッド・ガーデンに向かう道は
世界遺産登録の評価対象となった景観です。
19世紀の英国式庭園の景観が
現在も残されています。
スワンレイクとガゼボ
スワンレイクは植物園で最も美しい池。
池の横には
ビクトリア様式のガゼボ(展望亭)があります。
この建物は
1850年に別の場所に建てられ、
1969年に現在の場所へ移築されました。
湖には白鳥が泳ぎ、
非常に優雅な景色が広がります。
池のほとりには白鳥のモニュメントも設置されています。



5ドル紙幣の木
シンガポール5ドル紙幣に描かれている
テンブス(Tembusu)
の大木があります。
枝が地面に這うように広がる
特徴的な形をしています。

丸い石の噴水
水の上に浮かぶ石が
くるくる回る不思議な噴水。
手で押すと
回転方向が変わります。

幸運のサガの実
サガのヘリテージツリーでは
赤い小さな実が落ちています。
この実は
100個集めると願いが叶う
という言い伝えがあります。
実が見られるのは
主に 1〜2月頃です。

世界最大のラン
植物園の中でも特に珍しいのが
タイガーオーキッド(Grammatophyllum speciosum)です。
これは世界最大級のランとして知られ、
1株の大きさは 数メートルにも成長します。
花の模様が虎の斑点に似ていることから
タイガーオーキッド(虎ラン)と呼ばれています。
かつてはシンガポールにも自生していましたが、
都市開発の影響で野生個体はほとんど消滅しました。
現在はこのボタニック・ガーデン内に
わずかに保護されているのみとなっています。
巨大なランが木のように生えている姿は
普通のランのイメージとはまったく違い、
植物園ならではの見どころです。

プラントハウスのレンガの階段
園内にあるプラントハウスへ続くレンガの階段は、
シンガポールの歴史を物語る場所のひとつです。
この階段は 第二次世界大戦中の日本統治時代(1942〜1945年) に、
捕虜となった外国人によって造られたと伝えられています。
レンガの表面には小さな矢印のような刻みが無数に残っており、
これは当時の捕虜たちが密かに刻んだ印とも言われています。
現在では植物園の景観の一部となっていますが、
こうした歴史の痕跡が残っているのも
シンガポール・ボタニック・ガーデンの特徴です。

シンガポール国花のラン(Vanda Miss Joaquim)
シンガポール植物園を象徴する花が
バンダ・ミス・ジョアキム(Vanda Miss Joaquim)です。
このランは 1893年、
シンガポールの園芸家
アグネス・ジョアキム(Agnes Joaquim)
によって発見された自然交配種です。
当時の植物園長が彼女の功績を称え、
彼女の名前を冠して
Vanda Miss Joaquim と名付けました。
鮮やかな紫色の花を咲かせるこのランは、
一年を通して花を咲かせる強い生命力を持ち、
1981年に
シンガポールの国花として正式に指定されました。

ナショナル・オーキッド・ガーデン
ボタニックガーデン最大の見どころが
ナショナル・オーキッド・ガーデンです。
ここは世界でも最大級のランの展示施設で、
・原種ラン 約1,000種
・交配種 約2,000種
合計 約6万株のランが栽培されています。
シンガポールは
世界有数のラン育種研究の中心地としても知られ、
このガーデンでは新しい交配種が数多く誕生しています。
またシンガポールでは、
外国の国家元首や著名人の訪問を記念して
**ランの新品種に名前をつける文化(VIP Orchid Naming)**があります。
そのため園内には
・ネルソンマンデラ
・ダイアナ妃
・オバマ大統領
などの名前がついたランも展示されています。

ロケーションMAPです。

やはりここは、ランの花が綺麗です。

センブコープ・クールハウス(Sembcorp Cool House)
オーキッドガーデンの中には
高山気候を再現した巨大温室があります。
標高
1000〜2000m
気温
16〜23℃
という環境を人工的に作り、
通常は熱帯では育たない高山ランを展示しています。
霧がかかったような冷涼な空間で、
まるで山岳地帯の森の中を歩いているような雰囲気です。


ユーエン・ペン・マックニース
ブロメリア・コレクション
(Yuen Peng McNeice Bromeliad Collection)
このエリアでは
- カリブ海
- 中央アメリカ
- 南アメリカ
などの新熱帯地域に生育する
ブロメリア科植物のコレクションが展示されています。
色鮮やかな葉を持つ観葉植物が多く、
南国らしい植物の姿を見ることができます。


ジンジャー・ガーデン
ジンジャー・ガーデンでは
ショウガ科植物を中心に
約250種類の植物が栽培されています。
ショウガ科の植物は東南アジアの料理や薬草としても
重要な役割を持つ植物です。
この場所では 1859年からジンジャー研究が行われていたことから、
ジンジャー・ガーデンという名前になりました。



ヒーリング・ガーデン
ヒーリング・ガーデンでは
東南アジアの伝統医療に使われる植物を中心に
約400種類の薬用植物
が展示されています。
それぞれの植物には効能の説明もあり、
伝統医療や薬草文化を学ぶことができます。
熱帯雨林の森
ナッシムゲート近くには
約 6ヘクタールの熱帯雨林が残されています。
都市の中心にありながら、
シンガポール本来の自然環境が保存された貴重な場所です。
巨大な高木の下には
- シダ植物
- ラン
- ハーブ
など 約300種類の植物が生育しています。

ヘリテージミュージアム
園内のヘリテージミュージアムでは
植物園の歴史が紹介されています。
特に重要なのが
ゴム研究の歴史です。
ここで確立された
ゴム樹液の採取技術
がマレー半島に広まり、
世界最大のゴム生産地が東南アジアへ移りました。
この研究が
自動車タイヤ産業の発展を支えたことが
世界遺産登録の重要な理由になっています。


シンガポールといえば、マリーナベイの近未来的な景観を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかしこのボタニック・ガーデンには、近代産業を支えた植物研究の歴史と、都市の中に残された熱帯自然が共存しています。
世界最大級のラン園、原生林、英国式庭園。
観光地というより、シンガポール市民の日常の中にある世界遺産です。
時間に余裕があれば、マリーナエリアだけでなく、ぜひこの植物園にも足を運んでみてください。
高層ビルが並ぶ都市のすぐ隣で、150年以上続く植物研究の歴史と熱帯の自然を体感できる場所です。
シンガポールを含むアジア・オセアニアには、
多くの魅力的な世界遺産が点在しています。
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