アーサー・コナン・ドイルが1912年に発表したSF小説『失われた世界(The Lost World)』。
恐竜や未知の生物が生き残る秘境として描かれたこの作品の舞台モデルになったといわれるのが、
南米北部に広がる「ギアナ高地(Guiana Highlands)」です。
ベネズエラ、ガイアナ、スリナム、フランス領ギアナ、ブラジルにまたがる広大な高原地帯であり、
世界最高落差979mを誇るエンジェルフォールもこの地域にあります。
私もベネズエラ滞在中にヘリコプターによる空中遊覧と上陸ツアーに参加しました。
実際に訪れてみると、
- 20億年前の地層が残る世界最古級の大地
- 断崖絶壁のテーブルマウンテン「テプイ」
- 原始的な固有植物が生息する独特の生態系
- 雲海の上に浮かぶような絶景
- まさに『失われた世界』そのものの風景
を体感することができました。
今回は実際に訪れたギアナ高地を紹介します。
カナイマ国立公園(Canaima National Park)
1994年 ユネスコ世界自然遺産登録
カナイマ国立公園はベネズエラ南東部のグラン・サバナ地域に広がる広大な国立公園です。
総面積は約3万㎢に及び、四国の約1.6倍という圧倒的な規模を誇ります。
公園内には約20億年前に形成された地層が長い年月をかけて浸食され、
100以上ものテーブルマウンテン(テプイ)が点在しています。
世界最高落差979mを誇るエンジェルフォールもこの世界遺産の一部であり、
多くの旅行者がこの壮大な景観を目指して訪れます。
カナイマ湖周辺は、その玄関口となるエリアです。
世界遺産に選ばれた背景
カナイマ国立公園が1994年に世界自然遺産へ登録された理由は、
地球上でも極めて独特な地形と生態系を残しているためです。
最大の特徴は、約20億年前に形成された地層から生まれたテーブルマウンテン(テプイ)の存在です。
切り立った断崖に囲まれたテプイの山頂部は、
長い間ほかの地域から隔離されてきました。
その結果、多くの固有植物や固有動物が進化し、
世界的にも貴重な生態系が形成されています。
また、エンジェルフォールをはじめとする数多くの滝、
熱帯雨林、サバンナが織りなす景観美も高く評価されました。
学術的価値と景観的価値の両方を兼ね備えた自然遺産として、ユネスコの登録基準を満たしています。
南北アメリカには数多くの魅力的な世界遺産があります。
興味のある方は以下の記事もあわせてご覧ください。

カナイマ国立公園の歴史背景
カナイマ国立公園は1962年に設立されました。
この地域には古くから先住民族ペモン族が暮らしており、
現在でもカナイマ村周辺では伝統文化が受け継がれています。
テプイはペモン族の伝承の中で神聖な存在とされ、多くの神話や伝説が残されています。
20世紀に入ると探検家や地理学者による調査が進み、
その壮大な景観が世界的に知られるようになりました。
現在はエンジェルフォール観光の拠点として発展していますが、
秘境らしい雰囲気は今も色濃く残っています。
湖畔を歩いていると、観光地でありながら大自然の中に暮らす人々の生活も感じられます。
ギアナ高地(Guiana Highlands)
住所:8011, Bolívar
ギアナ高地は南米北東部に広がる古い地質構造「ギアナ楯状地(Guiana Shield)」の一部です。
この地域の岩石は約20億年前に形成された非常に古いもので、
地球上でも最古級の陸地のひとつとされています。
現在の南米大陸はかつてゴンドワナ大陸の一部でしたが、
ギアナ高地周辺は地質的に安定していたため、大規模な造山活動の影響をほとんど受けませんでした。
その結果、古代の地形や生態系が比較的良好な状態で残り、
「失われた世界」のモデルとも呼ばれる独特の景観を形成しています。
ヘリコプターでギアナ高地へ
ギアナ高地は熱帯地域に位置していますが標高が高く、常に雲や霧が発生しています。
そのためヘリコプターでテプイの頂上へ降り立てる確率はそれほど高くありません。
天候が悪い日は上陸そのものが中止になることもあり、
運良く着陸できたとしても滞在時間は数分から十数分程度になることが多いそうです。
料金も非常に高額なため、参加するかどうか悩む人も多いと思います。
私もかなり迷いました。
しかし結果として、この旅で最も印象に残る体験となりました。

テプイ群の上空を飛ぶ
ヘリコプターが離陸すると、しばらくして巨大なテプイ群が姿を現します。

ギアナ高地全体の面積は約21万5000㎢。
日本の本州に匹敵する広さの中に、100を超えるテプイが点在しています。
地上から見ると巨大な山ですが、
上空から眺めると本当にテーブルのように平らな山頂が続いていることが分かります。
まさに地球とは思えない景色です。
ヘリポートから撮影したテプイ群の映像を動画にまとめました。
【動画①:テプイ群の空中遊覧】
空から見た失われた世界
ヘリポートから飛び立ち、ギアナ高地上空を遊覧しました。
眼下にはどこまでも続く熱帯雨林。
そして、その中から突如として現れる巨大な断崖絶壁。

テプイの山頂は周囲の熱帯雨林から1000m以上も高い場所に位置しています。
長い地球の歴史の中で侵食から取り残された巨大な岩盤が、
まるで空中に浮かぶ島のように見えます。
まさに陸の孤島です。
ギアナ高地の魅力はテプイだけではありません。
果てしなく続く森林や谷、雲海に覆われた古代の大地など、
空から眺めることでこの地域の圧倒的なスケールを実感できます。
面積約21万5000㎢に広がる世界最大級の秘境の風景をご覧ください。
【動画②:ギアナ高地の空中遊覧】
奇跡的にテプイへ上陸
気候は熱帯性で、
- 12月~4月:乾季
- 5月~11月:雨季
となります。
年間降水量は4000mmを超える場所もあり、天候は非常に変わりやすいことで知られています。
私が訪れたのは9月。
雨季の真っ最中だったため、上陸は難しいだろうと覚悟していました。
しかし、この日は奇跡的に風が弱まり、ヘリコプターが着陸。
念願だった世界最古級の大地へ足を踏み入れることができました。

20億年前の大地
足元には砂岩が広がっています。
この岩石は約20億年前に堆積したものとされ、長い年月をかけて現在の姿になりました。
人工物は一切ありません。
見渡す限りの岩と植物。
そして静寂。
人類の歴史がいかに短いものなのかを実感させられる景色でした。
テプイに生きる固有植物
ギアナ高地の土壌は栄養分が少なく、大量の雨によって養分も流されやすいため、
生物にとって決して恵まれた環境ではありません。
しかし、その隔絶された環境ゆえに独自の進化を遂げた植物が数多く存在しています。
確認されている植物は約4000種。
そのうち多くが固有種とされています。
パイナップル科や食虫植物の仲間も多く見られ、他地域では見られない植物相を形成しています。
砂岩の大地に咲く黄色い花。
そして鮮やかなピンク色の花。
厳しい環境の中で力強く咲く姿が印象的でした。







圧倒される20億年前の大地。


まさに、世界最大の秘境。
そして、絶景。


テプイ上陸の様子
ギアナ高地は年間を通じて雲や霧に覆われることが多く、
ヘリコプターが着陸できる機会は限られています。
私が訪れたのは雨季の9月でしたが、奇跡的に天候が回復し、
世界最古級の大地へ降り立つことができました。
砂岩が広がる山頂や固有植物の姿など、実際にテプイへ上陸した際の様子を動画にまとめています。
【動画③:テプイ上陸の様子】
世界最大級の秘境
どこまでも続く断崖絶壁。
雲海の上に広がる原始の世界。
そして20億年前から続く地球の記憶。
ギアナ高地は、まさに世界最大級の秘境と呼ぶにふさわしい場所でした。
写真だけでは伝わらない圧倒的なスケール感がありますので、ぜひ動画もあわせてご覧ください。
旅の終わりに
小さい頃に観た『ドラえもん のび太の大魔境』。
その中に登場する「ヘビースモーカーズフォレスト」がギアナ高地をモデルにしていると知り、
いつか訪れてみたいと思っていました。
そして実際に立ってみると、想像をはるかに超える景色が広がっていました。
ベネズエラは治安面の不安もあり、
ここまで到達するにはチャーター機やヘリコプターなど多額の費用も必要です。
それでも、
「世界でもっとも秘境らしい秘境へ行きたい」
そう考える旅好きの方には、心からおすすめしたい場所です。
ここには確かに『失われた世界』が存在していました。

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