中央アジアの国・ウズベキスタンの首都タシケント。
この街に、世界でも屈指の美しさを誇る地下鉄があることをご存じでしょうか。
タシケント地下鉄は、
1977年、中央アジアで初めて開業した地下鉄。
ソ連時代に建設され、1991年のソ連崩壊以前に中心部分が完成しています。
特徴は何と言っても――
駅ごとに異なるテーマを持つ、圧倒的な装飾美。
ウズベキスタンを代表する建築家・芸術家が建設に携わり、
イスラム文化・詩・科学・宇宙開発などをモチーフにした駅構内は、
まるで地下に広がる美術館のようです。
かつては軍事施設扱いのため撮影禁止でしたが、
2018年に全面的に撮影が解禁。
現在は、観光客でも自由に写真を撮ることができます。
今回は、実際に巡った中から
タシケント地下鉄を代表する駅を紹介します。
タシケント地下鉄の基本情報
- 開業:1977年
- 路線数:3路線
- 駅数:43駅
特徴:ソ連時代の「宮殿様式」地下鉄
駅ごとに明確なテーマ設定・地震対策を施した堅牢な構造
料金も非常に安く、観光の移動手段としても使いやすい地下鉄です。
アリシェール・ナヴォイ(Alisher Navoiy)駅
ウズベキスタンを代表する15世紀の詩人
アリシェール・ナヴォイの名を冠した駅。
白を基調とした構内は、
アーチ型の支柱とイスラム文様の天井が美しく調和し、
「宮殿様式」と呼ばれる装飾が特徴です。



その中のひとつが、
アラブの古典的な愛の物語
「ライラとマジュヌーン」。

詩・文学・イスラム文化が融合した、
タシケント地下鉄を象徴する駅のひとつです。

コスモナウルトラ(Kosmonavtlar)駅
「宇宙」をテーマにした、
タシケント地下鉄でも特に印象的な駅。
ウズベキスタンのティムール朝時代の天文学から、
ソ連時代の宇宙開発までをつなぐ歴史が、
壁面レリーフで表現されています。
構内は、青・群青色を基調に、
明るい色の陽極酸化アルミニウムで装飾。
天井には、天の川を模したデザインが施され、
ガラスの星が散りばめられています。

天の川に見えるでしょうか?

壁面には、ソ連の宇宙開発を支えた人物たちの肖像。
ユーリイ・ガガーリンの肖像

ウラジーミル・ジャニベコフの肖像

ワレンチナ・テレシコワの肖像





地下にいながら、
宇宙へと広がるような感覚を味わえる駅です。
タシケント(Tashkent)駅
タシケント地下鉄の中心駅。
装飾は比較的シンプルですが、
白を基調としたタイル彫刻が整然と並び、
洗練された印象を受けます。
派手さはないものの、
主要駅らしい落ち着いた雰囲気が特徴です。



ユーヌス・ラジャビィ(YUNUS RAJABIY)駅
ウズベキスタンの音楽文化を象徴する駅。
民族音楽とソ連時代のデザインが融合した空間で、
文化人の名を冠した駅ならではの落ち着いた雰囲気があります。

ボドムゾル(BodomZor)駅
現代的で明るいデザインが特徴の駅。
装飾は控えめながら、清潔感があり、
日常使いの駅としての顔を持っています。


ガフルグロム(Gafur Gulom)駅
ウズベキスタンの詩人・作家
ガフル・グロムの名を冠した駅。
文学をテーマにしたレリーフが配され、
地下鉄でありながら、文化施設のような空気感があります。

タシケントの地下鉄は、
単なる「移動のための交通機関」ではありません。
そこには、
ソ連時代の理想と技術、
イスラム文化と詩、
そして宇宙へ向かおうとした時代の記憶が、
静かに、しかし確かに刻まれています。
地上の喧騒から一歩降りた先で出会うのは、
まるで地下に造られた文化遺産のような空間。
列車を待つわずかな時間さえも、
美術館を歩いているかのような感覚に変えてくれます。
タシケントを訪れたなら、
ぜひ目的地を決めず、
気になる駅で降りてみてください。
そこには、
ガイドブックの地図だけでは伝わらない、
ウズベキスタンのもうひとつの表情が待っています。

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