マニラ中心部を流れるパッシグ川の北側。
その一帯には、昔ながらのマニラの空気が色濃く残るエリアが広がっています。
南北を走るリサール通り(Rizal Avenue)を境に、
西側がチャイナタウン「ビノンド」、
そして東側が今回紹介する「キアポ(Quiapo)」です。
高層ビルが並ぶマカティやBGCとはまったく違い、
雑踏、屋台、露店、ジプニー、祈りの声が混ざり合う――
庶民のマニラを最も強く感じられる場所のひとつです。
一方で、観光地化され過ぎていないリアルな下町だからこそ、
スリや置き引きなど治安面の注意も必要なエリアでもあります。
キアポ教会(Quiapo Church)
住所:910 Plaza Miranda, Quiapo, Manila, 1001 Metro Manila, フィリピン
| 時間 | 24時間 |
| 定休日 | 無休 |
| 料金 | 無料 |
| 公式URL | キアポ教会 (quiapochurch.com.ph) |
キアポ地区の中心に建つ、マニラ屈指のカトリック巡礼地です。
正式名称は「Minor Basilica and National Shrine of Jesus Nazareno」。
1582年にスペイン人宣教師によって創建され、
現在の建物は度重なる火災や地震を経て再建されたものになります。
この教会最大の存在が、
17世紀にメキシコから運ばれたとされる「ブラックナザレ像(Black Nazarene)」です。
黒い木製のキリスト像は、奇跡を起こす存在として深く信仰されており、
フィリピン全国から巡礼者が集まります。

実際に訪問したのは日曜日。
教会前のプラザ・ミランダ周辺から、すでに大量の信者で埋め尽くされており、教会内部も人であふれていました。
内部では、ブラックナザレ像へ向かって必死に祈る人々、涙を流しながら十字を切る人、
家族で祈る人など、観光地というより巨大な信仰空間という空気が強く漂っています。
特に印象的だったのが、
信者たちがブラックナザレ像の足へ触れようとしていた光景です。
長年、多くの人が祈りを込めて触れ続けた結果、足の部分は摩耗して傷んでいるほど。
フィリピンにおけるカトリック信仰の強さを、視覚的に実感できる場所でもありました。
ただ、日曜日は本当に混雑します。
私が訪れた時も、内部へ入っても流されるように進む状態で、
ブラックナザレ像を近くで見る余裕はほとんどありませんでした。

ゆっくり見学したい場合は、平日午前中の方が比較的落ち着いていると思います。
なお、毎年1月9日には、
フィリピン最大級の宗教行事「ブラックナザレ祭り(Traslación)」が開催されます。
数百万人規模とも言われる信者が集まり、ブラックナザレ像を載せた山車が街を巡行。
キアポ一帯が人で完全に埋め尽くされる、フィリピンを代表する宗教イベントです。


マニラ・ゴールデン・モスク(Manila Golden Mosque)
住所:HXWP+835, Globo de Oro St, Quiapo, Manila, 1001 Metro Manila, フィリピン
| 時間 | 4:00~24:00 |
| 定休日 | 無休 |
| 料金 | 無料 |
キアポの奥へ進むと、今度は一気にイスラム色の強い空気へ変わります。
そこで現れるのが、金色のドームが目を引く「マニラ・ゴールデン・モスク」です。
1976年、当時の大統領夫人イメルダ・マルコス主導のもと建設されました。
当初は、リビア最高指導者ムアンマル・アル=カッザーフィー訪問に合わせて整備されたと言われていますが、
結果的に訪問自体は中止となりました。
それでも現在では、マニラ最大級のイスラム礼拝施設として機能しています。
内部には最大約3,000人を収容可能。
特に金曜礼拝では、多くのムスリム信者で満員になるそうです。
実際に周辺を歩いてみると、アラビア語表記の看板、ヒジャブ姿の女性、
ハラール系飲食店なども多く、「ここ本当にマニラ?」と思うほど空気が変わります。
もともとフィリピン北部までイスラム勢力が広がっていた歴史もあり、
スペイン植民地化以前のマニラは、イスラム文化圏の影響を強く受けていました。
現在でもフィリピン国内には多数のムスリムが暮らしており、
特にミンダナオ方面との繋がりも深いと言われています。

建築面でも特徴的で、中東風のミナレットを持ちながら、装飾にはマラナオ族、マギンダナオ族、タウスグ族など、
フィリピン南部民族文化の意匠が取り入れられています。
単なる中東風モスクではなく、「フィリピン独自のイスラム文化」が見える建築でした。
なお、周辺はローカル色がかなり強く、狭い路地も多いため、観光時は昼間の訪問がおすすめです。


聖セバスティアン教会(San Sebastian Church)
住所:Pasaje del Carmen St, Quiapo, Manila, 1001 Metro Manila, フィリピン
| 時間 | 6:00~19:00(日:~21:00) |
| 定休日 | 無休 |
| 料金 | 無料 |
キアポ地区でも、建築好きならぜひ立ち寄りたいのが聖セバスティアン教会です。
初代教会は木造だったと伝えられていますが、暴動、地震、火災などで何度も倒壊・焼失。
その経験から、1891年に「災害に強い教会」として再建されたのが現在の姿です。
最大の特徴は、アジア唯一とも言われる全鉄骨構造の教会であること。
設計を担当したのは、スペイン人建築家ヘナロ・パラシオス。
鉄材パーツはベルギーで製造され、
マニラへ運ばれて組み立てられたと言われています。
実際に見ると、通常の石造教会とは雰囲気がかなり違います。
尖塔のラインが非常に鋭く、ゴシック建築特有の垂直感がより強調されている印象でした。

教会の横には、寮など関連する施設が並んでいます。

一方で、長年の湿気や塩害の影響もあり、鉄骨部分にはかなり錆が目立ちます。
訪問時も内部は修復工事中で、保存の難しさを感じました。

それでも、天井アーチの美しさや、ドイツ製ステンドグラスの光は非常に印象的。
「石ではなく鉄で教会を造る」という、19世紀末の技術的挑戦を今も体感できる貴重な建築です。




キアポ&チャイナタウン散策について
キアポとビノンド(チャイナタウン)は隣接しており、
徒歩でも十分に回れるエリアです。
実際に歩いてみると、
中国寺院、カトリック教会、モスク、市場、ローカル食堂が混在しており、
マニラという都市の多民族性をかなり強く感じました。
一方で、観光地化されたエリアではないため、
スマホの露出や荷物管理には注意が必要です。
特に夕方以降は人通りや雰囲気も変わるため、
観光するなら明るい時間帯がおすすめ。
MRTやLRT駅周辺は非常に混雑するので、
Grab利用の方が移動しやすい場面も多いと思います。
マカティやBGCだけでは見えてこない、
リアルなマニラを歩いてみたい人には、非常に印象に残るエリアでした。

コメント