ジョージアを旅していると、ガイドブックに大きく取り上げられていない場所ほど、
この国の歴史や信仰の奥深さを感じることがあります。
今回レンタカーで訪れたのは、トビリシ近郊のベタニア修道院(Betania Monastery)と、
中央ジョージアの町ゴリを見下ろすゴリ城砦(Gori Fortress)です。
ひとつは中世ジョージア王国の宗教文化を伝える修道院、
もうひとつは中央ジョージアの要衝を守ってきた軍事要塞。
性格の異なる2つの場所ですが、どちらもジョージアの歴史を理解するうえで興味深い場所でした。
目次
ベタニア修道院(Betania Monastery)
住所:MJR6+2JJ, Nakhshirgora, ジョージア
| 時間 | 11:00~18:00 |
| 定休日 | 無休 |
| 料金 | 無料 |
トビリシ中心部から南西へ約16km、車でおよそ30分。
森と丘に囲まれた静かな場所に、ベタニア教会はひっそりと佇んでいます。
ベタニアの名の由来
「ベタニア(Bethany/Bethania)」という名前は、新約聖書に登場するエルサレム近郊の村ベタニアに由来します。
ベタニアは、イエス・キリストがラザロを死から蘇らせた場所として知られ、
キリスト教において重要な土地のひとつです。
ジョージアのベタニア修道院も、この聖書の地にちなんで名付けられたとされています。
ベタニア修道院の歴史
ベタニア修道院を代表する建築が、
12~13世紀頃に建てられたとされる聖母マリア生誕教会です。
ドームを持つ典型的な中世ジョージア教会建築で、
敷地内には小規模な聖ゲオルギオス教会も残されています。
修道院は長い歴史のなかで衰退し、一時は荒廃しました。
19世紀には再発見・修復が進められ、再び宗教施設として使われるようになります。
ソビエト時代には宗教活動が厳しく制限されましたが、
ベタニアでは修道生活が長期間にわたって維持されたことで知られています。
その後、ジョージア正教会の活動が再び認められるようになり、
現在も現役の修道院として信仰が受け継がれています。
フレスコ画の見どころ
内部には、12~13世紀ジョージア美術を代表するフレスコ画が残されています。
- 北側壁:救世主キリストの受難の周期
- 南側壁:旧約聖書の場面
- 西側壁:最後の審判
- 祭壇後陣:巻物を手にした預言者たち
- 祭壇横:「祈り」の構図(玉座のキリスト像は断片のみ)
特に注目したいのが、ジョージ3世、タマル王妃、ジョージ4世ラッシュといったジョージア王族の肖像フレスコ画です。
これらは1207年、タマル王妃存命中に描かれたとされ、ベタニア教会のタマル王妃像は、
ジョージア国内に現存する4点のうちの1つ。
その姿は、現在の50ラリ紙幣にも採用されています。
残念ながら、教会内部は非公開扱いで、フレスコ画の撮影はできませんでした。
アクセスと注意点(補足)
- 公共交通機関の直行便はなく、タクシーまたはレンタカー推奨
- 内部は撮影禁止(特にフレスコ画)
- 教会直前は未舗装路あり(雨天時は足元注意)
- 現役の修道院のため、露出の多い服装は避けたい
- 滞在目安:30~45分


ここは観光地化された修道院というよりも、
「今も信仰が続いている場所」へ足を踏み入れる感覚が強く残りました。
トビリシ中心部からそれほど離れていないにもかかわらず、
周囲を森と丘に囲まれ、街とはまったく異なる時間が流れています。

周囲に広がる緑豊かな風景を眺めていると、
「ああ、ジョージアに来たのだな」と改めて実感させられます。

ベタニア修道院へのアクセス
公共交通機関だけで訪れるには少し不便な場所にあります。
トビリシからタクシーをチャーターするか、レンタカーを利用するのが現実的です。
私も今回はレンタカーで訪れました。
見学時の注意点
- 教会内部では撮影が制限される場合があります
- 教会周辺には未舗装区間があります
- 雨天時は路面状況に注意
- 現役の修道院なので露出の多い服装は避ける
- 静かに見学する
- 滞在時間の目安は30~45分
観光施設ではなく宗教施設であることを意識して訪れたい場所です。
ゴリ城砦(Gori Fortress)
住所:10 Besarion Jughashvili St, Gori, ジョージア
| 時間 | 24時間 |
| 定休日 | 無休 |
| 料金 | 無料 |
ジョージア中部の町ゴリ。
その中心部にある岩山の上に築かれているのが、
ゴリ城砦(Gori Fortress)です。
町のどこからでも目に入りやすい巨大な城砦で、ゴリの歴史を象徴する存在となっています。
中央ジョージアを守る戦略拠点
ゴリは、ジョージア東部と西部を結ぶ交通の要衝に位置しています。
さらに周辺にはクラ川(ムトゥクヴァリ川)とリアフヴィ川が流れ、
古くから軍事・交通の両面で重要な場所でした。
その中心にある丘を利用して築かれたゴリ城砦は、
中央ジョージアを押さえるための重要な軍事拠点として機能してきました。
現在の城砦は主に中世以降の改修によるものですが、
ゴリ周辺にはそれ以前から人々が暮らしていたことが考古学的調査によって確認されています。
何度も争奪されたゴリ城砦
ジョージアは地理的にヨーロッパとアジアの境界に位置し、
長い歴史のなかで周辺の大国からたびたび侵攻を受けてきました。
ゴリ城砦も例外ではありません。
ペルシアやオスマン帝国をはじめとするさまざまな勢力がこの地域へ進出し、
城砦の支配を巡って争いました。
17世紀にはカルトリ王ロストムの時代に大規模な改修が行われ、
18世紀にはエレクレ2世の時代にも整備されています。
その後、ジョージアがロシア帝国の支配下に入ると、
城砦としての軍事的重要性は次第に失われていきました。
1920年にはゴリ周辺を襲った大地震によって大きな被害を受けています。


ゴリ城砦の建築
城砦は自然の岩山の形を利用して築かれています。
華やかな宮殿というよりも、
敵の侵入を防ぐことを最優先した実戦的な軍事施設です。
城内や城壁には、
- 丘の形に沿って築かれた城壁
- 石を積み上げた防御施設
- 塔や門の遺構
- 水を確保するための施設
- 教会関連の遺構
などが残っています。
何世紀にもわたって増改築されたため、
城壁を観察すると石積みや建築方法が均一ではない部分も見られます。
それもまた、この城が長期間使われてきたことを物語っています。

ゴリ城砦は「美しく整備された城」という印象ではありません。
むしろ、荒々しい石積みと巨大な城壁、
そして周囲を見渡せる圧倒的な立地そのものが最大の見どころです。
なぜここに城が築かれたのか。
城壁の上からゴリの町と周囲の平原を眺めると、その理由がよく分かります。


ゴリ城砦から眺めるゴリの町
ゴリ城砦を訪れたら、遺構だけでなく城壁からの眺望も見逃せません。
城砦が建つ丘からは、
ゴリ市街とその周囲に広がる平原を一望できます。
城が単なる権力の象徴ではなく、
周囲の街道や平原を監視するための軍事施設だったことを実感できる景色です。
見学時の注意点
- 石段や凹凸のある場所が多い
- 歩きやすい靴がおすすめ
- 城壁周辺では足元に注意
- 強風時は特に注意
- 滞在時間の目安は45分~1時間
ゴリ城砦へのアクセス
ゴリはトビリシから西へ約75kmに位置しています。
車なら交通状況にもよりますが、
トビリシから1時間30分前後が目安です。
ゴリ市内に到着すれば、城砦は中心部にあるためアクセスしやすく、
スターリン博物館など市内の観光スポットと組み合わせて巡ることもできます。
レンタカーを利用する場合は、
ゴリだけでなく周辺の観光地と組み合わせると効率よく回れます。
旅の終わりに
今回はレンタカーを利用したことで、
ガイドブックでは大きく取り上げられない場所にも足を運ぶことができました。
ベタニア修道院で感じたのは、
中世から現代へと受け継がれてきたジョージア正教の信仰。
一方、ゴリ城砦では、
東西を結ぶ要衝を巡って繰り返されてきた争いの歴史を感じました。
一見するとまったく異なる2つの場所ですが、
そこには信仰・王権・軍事というジョージアの歴史を形づくってきた要素が残されています。
ジョージアの地方を旅していると、
有名観光地ではない場所にも教会や城砦、遺跡が数多く残っています。
Google Mapを頼りに自分で探し、
その場所に立って歴史を想像しながら巡る。
そんな旅ができることも、ジョージアをレンタカーで巡る魅力のひとつでした。
有名観光地だけでは見えてこないジョージアの歴史に触れたい人には、
ベタニア修道院とゴリ城砦もおすすめしたい場所です。

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