スペイン旅行でバルセロナを訪れる人にとって、
サグラダ・ファミリアはやはり特別な存在です。
ただ、この街の面白さはひとつの建築だけでは終わりません。
町の中を歩き、少し郊外まで足を延ばしていくと、
アントニ・ガウディの発想が住宅、公園、教会へと広がっていく流れが見えてきます。
今回は後編として、コロニア・グエル教会地下聖堂、グエル公園、
カサ・バトリョ、カサ・ミラを中心に、実際に巡るイメージが湧くようにご紹介します。
目次
アントニ・ガウディ作品群 (Works of Antoni Gaudí)
1984年 ユネスコ文化遺産に登録。
その後、登録範囲が拡張され、アントニ・ガウディが設計した7つの建築物が世界遺産として評価されています。
登録対象は、コロニア・グエル教会地下聖堂、グエル公園、カサ・バトリョ、
カサ・ミラ、サグラダ・ファミリア、カサ・ビセンス、グエル邸です。
バルセロナの町中だけでなく、少し離れた場所まで含めて巡ってみると、
ガウディ建築が単発の名作ではなく、時代ごとに形を変えながら積み上がってきたことが分かります。
前編から続けて読むと、作品群としての奥行きがより見えやすくなります。
世界遺産に選ばれた背景
アントニ・ガウディの作品群が世界遺産に選ばれた理由は、見た目の個性だけではありません。
自然の観察から生まれた曲線、宗教的な象徴、素材の実験性、
構造への新しい発想がひとつの建築に溶け込んでいて、
19世紀末から20世紀初頭の建築史の中でも非常に独自性が高いことが評価されています。
実際に歩いてみると、奇抜な建築という言葉だけでは説明しきれず、
光の入り方や壁面の表情、町とのつながりまで含めて完成していることに気づかされます。
建物単体で見るより、作品群としてたどったほうが、ガウディの発想の広がりがはっきり見えてきます。
歴史背景
アントニ・ガウディは1852年にカタルーニャ地方に生まれ、主にバルセロナを舞台に活躍しました。
初期にはオリエンタルやイスラム建築の影響も見られますが、
やがて自然の造形を思わせる有機的な表現へと進み、住宅、邸宅、教会、公園と活動の幅を広げていきます。
実業家エウセビ・グエルとの関係も大きく、グエルの支援を受けたことで、
ガウディは実験的で大胆な建築を形にしていきました。
後編で紹介する4つの作品を年代順に追っていくと、
装飾、構造、都市計画、宗教建築がどうつながっていったのかがよく分かります。
アントニ・ガウディの作品年表
年|仕事
1883|サグラダ・ファミリア(Sagrada Família)
1883~1885|カサ・ビセンス(Casa Vicens)
1884~1887|グエル別邸(Finca Güell)
1886~1889|グエル邸(Palau Güell)
1898~1900|カサ・カルベ(Casa Calvet)
1898~1914|コロニア・グエル教会地下聖堂(Cripta Colònia Güell)
1900~1914|グエル公園(Parc Güell)
1904~1906|カサ・バトリョ(Casa Batlló)
1905~1910|カサ・ミラ(Casa Milà)
前編のサグラダ・ファミリア、カサ・ビセンス、グエル邸とあわせて読むなら、こちらも自然につながります。

ヨーロッパ全体の世界遺産をまとめて見たい方は、こちらの一覧も旅の計画に便利です。

コロニア・グエル教会地下聖堂(Cripta Colònia Güell)
住所:Carrer Claudi Güell, 08690 La Colònia Güell, Barcelona, Spain
| 時間 | 10:00~17:00 11月~3月(月曜~金曜日) 10:00~19:00 4月~10月(月曜~金曜日) 10:00~15:00(土・日・祝) |
| 定休日 | 1月1日、1月6日、聖週間の聖金曜日(移動祝日)、12月25日、12月26日 |
| 料金 | 8.5€(入場料) 9.5€(オーディオ付き入場料) |
| 公式URL | http://gaudicoloniaguell.org/ |
下記は、入場チケット

パンフレットはこんな感じです。

コロニア・グエル教会は、バルセロナから北西約20kmの位置にあり、
ガウディ作品群の中では少し離れた場所にあります。
(カタルーニャ鉄道の路線図)

チケットはこんな感じです。

最寄りのコロニア・グエル駅へ行くには、スペイン広場駅からFGC、
つまりカタルーニャ鉄道に乗る必要があります。
だいたい所要時間は25分ほどで、
中心部の観光地を離れて郊外へ向かう感じが新鮮でした。
それにしても驚かされたのは、コロニア・グエル駅が無人駅だったことです。
降りたホームの反対側が出口になっていて、駅を出ると足跡の案内があり、
その跡をたどっていくと、無事に教会地下聖堂へ到着します。

駅からチケット売り場までは10分ほどです。
繊維工業住宅地区を通り抜けていく途中にも見ごたえのある建築物がいくつかあり、
ただ移動するだけでも、この地域がひとつの計画的な居住区だったことが感じられます。
チケットを購入した後は、警備員がいる入口でチケットを見せて中へ進みます。




パンフレットを片手に歩いていると、バルセロナ中心部の華やかなガウディ建築とは違う、
落ち着いた空気が強く印象に残りました。

ガウディの実験場としての見どころ
コロニア・グエル教会地下聖堂は、有名な逆さづり模型の実験に長い時間をかけて着工された建築です。
ところが、着工からわずか6年後、ガウディがサグラダ・ファミリアに専念するため建設は中断され、
唯一講堂として完成していた半地下部分が礼拝堂として使われることになりました。

ガウディの最高傑作とも呼ばれています。

未完の建築ではありますが、そのぶん、ガウディの構造実験や空間の発想がむしろ生々しく残っています。
外観の一部にもサグラダ・ファミリアを思わせる表情があり、原型と呼ばれる理由も現地で見るとよく分かります。
バルセロナ中心部からは少し遠いですが、時間があるなら十分に足を延ばす価値のある場所でした。


グエル公園(Parc Güell)
住所:Carrer d’Olot, 5, 08024 Barcelona, Spain
| 時間 | 8:30~18:15(1/1~3/24、10/28~12/31) 8:00~20:30(3/25~4/29、8/27~10/27) 8:00~21:30(4/30~8/26) ※2/17~3/24は19:00まで延長 |
| 定休日 | なし |
| 入場料 | 大人 7.5€(事前予約)/8.5€(当日券) 子供・シニア 5.25€(事前予約)/6€(当日券) *グエル公園は営業時間外の早朝、夜間は無料で入園可能。 (無料時間は下記参照) 1月1日~3月30日は、 早朝6:00~8:30 夜間 18:15~23:59まで 3月31日~4月28日は、早朝6:00~8:30 夜間20:30~23:59まで 4月29日~8月25日は、早朝6:00~8:00 夜間 21:30~23:59まで 8月26日~10月26日は、早朝6:00~8:00 夜間 20:30~23:59まで 10月27日~12月31日は、早朝6:00~8:30 夜間18:15~23:59まで *有料エリアは、一度の時間帯に入場できる人数が400人までと決まってます。 |
| HP | https://parkguell.barcelona/en |
チケットはこんな感じです。

黄色のエリアは、有料になります。
それ以外は、無料。

グエル公園は、バルセロナ市街を見下ろす高台にあり、実際に行くと想像以上に広い場所です。
実業家グエルはここに60戸の宅地を造成し、イギリス風の田園都市を構想していましたが、
資金面などの事情で計画は中断され、その後、公園として生まれ変わりました。
だからこそ、ただの観光公園ではなく、都市計画の夢が途中で別の形に変わった場所でもあります。
歩き始めると、観光客の多さより先に、地形そのものを活かした広がりが印象に残りました。
バルセロナを見下ろす景色
高台にあるため、グエル公園からはバルセロナの街が一望できます。
市街地の向こうに海側まで視線が抜けていく景色は、建築を見るだけでは終わらない気持ちよさがあります。
園内を歩いていると、単なる公園というより、街全体を見渡すための舞台のようにも感じられます。
天気のよい日はそれだけで長く滞在したくなる場所です。

市場と貯水槽
市場と貯水槽として知られる空間では、全部で86本の柱が屋根を支えています。
その下には大広場の雨水をためる仕組みが設けられていて、装飾的に見える空間の中にも実用性がしっかり組み込まれています。
ガウディ建築らしい有機的な空間ですが、見ているうちに、水の流れや土地の使い方まで考えていたことがよく分かります。
美しさだけでなく、構造や仕組みまで面白いのがこの場所の魅力です。



お菓子の家
ヘンゼルとグレーテルの物語の中に出てくる「お菓子の家」がモデルとされていて、
実際に目の前で見ると本当に絵本の中の建物のようです。
天才画家ダリがケーキのようだと言ったという話も、この外観を見ると納得できます。
入口に立つ建物としての役割以上に、グエル公園全体の世界観を一瞬で伝える存在でした。
写真映えするだけでなく、最初に見たときの高揚感が強く残る建物です。


青色のオオトカゲ
45段の階段の真ん中あたりに、青色のカラフルなモザイク調のオオトカゲが設置されています。
この階段はギリシャ神話をモチーフにしているとされ、このオオトカゲはバルセロナの守り神として市民から愛されています。
ちなみに全長は4.2mあります。
観光客が集まる有名スポットですが、ただの人気撮影ポイントではなく、グエル公園の象徴そのもののような存在でした。


園内を歩くときのポイント
グエル公園は大変広く、1時間では回りきれないくらいです。
有料エリアと無料エリアが分かれていて、有料エリアは一度の時間帯に入場できる人数が限られているため、
事前予約を前提にしておくと安心です。
坂道も多いので、軽く見るつもりでも意外と時間がかかります。
時間にゆとりをもって、景色も建築もゆっくり観光してみてください。
急ぎ足より、歩きながら空気ごと味わうほうが合う場所です。
カサ・バトリョ(Casa Batlló)
住所:Passeig de Gràcia, 43, 08007 Barcelona, Spain
| 時間 | 9:00~21:00 |
| 定休日 | 基本なし。14:00で閉館する日もある。 |
| 料金 | 25€(通常料金) 31€(プレミアムヘッドセットのビデオガイドプライベートホールへの入場) 35€(プレミアムヘッドセットのビデオガイドプライベートホールへの入場・優先入場ヴィンテージフォト・キャンセル無料 39€(早朝入場) |
| 公式URL | https://www.casabatllo.es/en/ |
チケットはこんな感じです。


カサ・バトリョは、繊維業を営むバトリョ家の依頼を受け、ガウディが増改築を手がけた建物です。
グラシア通りを歩いていると、華やかな建物が並ぶ中でも、
この外観の青いタイルと独特のうねりはかなり目を引きます。
コンセプトは海とされ、ファサードのバルコニーは仮面のような意匠になっています。
ただ華やかなだけではなく、遊び心と技術が同時に見える建築でした。

外観の見どころ
外観の青色のタイルはとても印象的です。
ファサードに並ぶバルコニーは仮面のようにも見え、眺める角度によって建物の表情が変わります。
さらに、外観のタイルやガラスには廃棄物を再利用しているともされ、
この時代から再利用しながら建築美を実践していたことにも驚かされます。
ただ派手な装飾に見えて、実は発想の新しさまで感じられる外観です。

内部空間
建物内部は、海面の下がコンセプトになっていて、海底洞窟が建築化されているような空間です。
青色がとても印象的で、建物の中に入ると外観とはまた違う没入感があります。

巻貝のような天井も特徴的で、波や水の動きをそのまま室内に持ち込んだような雰囲気でした。
住宅でありながら、ひとつの物語の中に入り込んでいくような体験ができる建物です。



屋根裏構造と屋上
屋根裏では、カテナリーアーチの構造を見ることができます。
華やかな装飾の建築というイメージが強いですが、こうした構造部分を見ると、
ガウディの建築が見た目だけではないことがよく分かります。

屋上には、タイルのモザイクがびっしり貼られた煙突が並び、煙が風に揺らいで立ち上る様子を表しているとされます。
非常におしゃれなカサ・バトリョですが、100年以上前にこんな家を作るなんて、
やはりガウディはすごいと素直に感じる建物でした。


カサ・ミラ(Casa Milà)
住所:Provença, 261-265, 08008 Barcelona, Spain
| 時間 | 9:00~20:30【夜間ツアー21:00~23:00】(3/1~11/4、12/26~1/3) 9:00~18:30【夜間ツアー19:00~21:00】(11/5~2/28) 11:00~20:30(1/1) *入場は、開館30分前まで |
| 定休日 | 基本、無休(ただし、12/25、1/7~1/13は休み) |
| 料金 (主な) |
22€(LA PEDRERA BY DAY (日中の一般チケット) 29€(LA PEDRERA BY DAY PREMIUM(日中のプレミアムチケット) 34€(GAUDI’SPEDRERA :THE ORIGINS) |
| 公式URL | https://tickets.lapedrera.com/en |
カサ・ミラは、石を積み上げたような独特な形状から、
石切り場を意味する「La Pedrera」とも呼ばれています。
グラシア通り周辺を歩いていても、その波打つような外観はかなり印象的で、
直線を徹底的に排除した建築だということが一目で分かります。
この建物のテーマは山とされ、外観全体に岩肌のような質感があります。
華やかさではカサ・バトリョに目が向きがちですが、
カサ・ミラにはもっと重たくて彫刻的な迫力があり、通りの中でも独特の存在感がありました。
建物の背景
この建物はマンションとして建てられたもので、中にはガウディの博物館もあります。
また、当時は高額な家賃と見た目の斬新さから借り手がなかなか見つからず、
のちに条件付きの賃貸契約が結ばれたとも伝えられています。
今も実際に居住している世帯があるという話を知ると、この建物が美術館ではなく、
もともとは生活の場だったことがより実感できます。
観光名所として見るだけでは終わらない、生活の歴史も重なった建築です。
見どころ
私は時間の関係で中には入れませんでしたが、外観を見るだけでも十分に強い印象が残りました。
波打つ壁面や連続する曲線を見ていると、建物というより巨大な彫刻のようにも見えてきます。
こちらの建物は、ダン・ブラウンの『シンボル』という小説で重要な役割を果たしていることでも知られています。
さらに『オリジン』を読んでから歩くと、サグラダ・ファミリアやカサ・ミラなどがより印象深く見えてきます。
文学や映画の記憶と重ねながら歩けるのも、この建物の面白さです。
前編記事もあわせて読むと、バルセロナのガウディ建築を通しで追いやすいです。



アクセス
一般的な玄関口はバルセロナ・エル・プラット空港です。
空港から市内中心部までは、空港バス、地下鉄、近郊鉄道などで30分前後が目安です。
グエル公園、カサ・バトリョ、カサ・ミラは市内観光と組み合わせやすく、
地下鉄や徒歩で巡りやすい配置です。
一方、コロニア・グエル教会地下聖堂は、スペイン広場駅からFGCに乗り、
コロニア・グエル駅で下車して徒歩で向かいます。
グエル公園は入場人数制限がある時間帯もあるため事前予約が安心で、
カサ・バトリョやカサ・ミラも混雑日にはオンライン手配が便利です。
▶グエル公園 入場チケット(スペイン バルセロナ)
▶グエル公園 入園チケット(バルセロナ)
▶カサ・バトリョ チケット | スペイン
▶カサミラ 入場チケット(バルセロナ)
複数のガウディ建築をまとめて回りたい場合は、こうした組み合わせチケットも旅程を組みやすいです。
▶3つのガウディ建築:カサバトリョ、カサ・ビセンス、ラ・ペドレラ(カサミラ)
バルセロナでガウディ建築をさらに歩くなら
サグラダ・ファミリアだけでも十分に強烈ですが、後編で紹介した建築まで歩いてみると、
ガウディがひとつの天才的な名作だけを残した人ではないことがよく分かります。
住宅、公園、教会、郊外の実験的建築まで、それぞれ表情は違うのに、
どこにも自然と構造への執着が通っています。
バルセロナを歩く旅は、名所を消化する旅というより、
ひとりの建築家の発想を町全体でたどっていく旅に近いです。
時間が許すなら、中心部だけで終わらせず、コロニア・グエルまで含めて巡ってみてください。
そのほうが、ガウディ建築の面白さはずっと深く残ります。


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