中国には数多くの世界遺産があります。
その中でも、実際に歩いてみると雰囲気の違いを強く感じるのがマカオです。
中華人民共和国の特別行政区のひとつであるマカオは、かつてポルトガル領だった歴史を持っています。
そのため、街を歩いていると、中国南部の都市でありながら、石畳の広場や教会、やわらかな色合いの西洋建築が自然に現れます。
東洋の空気の中にヨーロッパの香りが混ざっていて、ただ移動しているだけでも景色の変化が楽しい場所でした。
その魅力が評価され、マカオでは街の建物や広場などが世界遺産に選ばれています。
大きな遺跡がひとつあるというより、歴史的な建築や広場が街全体に点在しているのが特徴です。
観光名所をひとつずつ巡るだけでなく、道と道のあいだの空気まで楽しめるのが、マカオ歴史地区の良さだと感じます。
アジア各地の世界遺産をあわせて見たい方は、こちらの一覧ページも参考になります。

マカオ歴史地区(The Historic Centre of Macao)
2005年 ユネスコ文化遺産に登録
登録名は、マカオ歴史地区です。
中華人民共和国の特別行政区であるマカオにある、20以上の建築や広場などの古跡を含む地区です。
かつてのポルトガルの植民地であったため、その名残が今も街の随所に残っており、東洋と西洋が融合した街並みになっています。
実際に歩いてみると、その特徴はとても分かりやすいです。
漢字の看板が並ぶ通りの先に教会が現れたり、坂道を上がると石畳の広場が広がったりして、同じアジアの街でも少し異なる空気を感じます。
観光地として整ってはいますが、作られたテーマパークのような印象ではなく、歴史の積み重なりが自然に残っているところが魅力です。
対象となっている30ヵ所の建造物や広場は、下記になります。
- 聖ポール天主堂跡
- 聖ドミンゴ教会
- 大堂
- モンテの砦
- 聖ローレンス教会
- 媽閣廟
- 港務局
- 鄭家屋敷-思想家鄭観応の故居
- 聖ヨゼフ修道院及び聖堂
- ドン・ペドロ5世劇場
- ロバート・ホー・トン図書館
- 聖オーガスティン教会
- 民政総署大楼
- 三街会館
- 仁慈堂大楼
- 盧家屋敷
- ナーチャ廟
- 旧城壁
- 聖アントニオ教会
- カーザ庭園
- プロテスタント墓地
- ギア要塞
- セナド広場
- リラウ広場
- 聖オーガスティン広場
- バラ広場
- 大堂広場
- 聖ドミンゴ広場
- イエズス会紀念広場
- カモンエス広場
こうして並べてみるとかなり数が多く見えますが、中心部に集まっている場所も多く、徒歩で巡れる範囲も少なくありません。
ただし、ひとつひとつを見ながら歩くと、想像以上に時間がかかります。
写真を撮ったり、坂道や石畳の道をゆっくり歩いたりしていると、一日で全部を回るのはやや慌ただしいと思います。
2〜3日ほどかけて、街歩きも含めて楽しむのがおすすめです。
聖ポール天主堂跡(Ruins of St. Paul’s)
住所:澳門耶穌會紀念廣場
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 時間 | 9:00~18:00 |
| 定休日 | 無休 |
| 料金 | 無料 |
マカオ観光の中でも、実際に目の前で見たときの迫力が特に強く印象に残るのが聖ポール天主堂跡です。
階段の下から見上げると、正面の巨大なファサードだけが空に向かって立ち上がっており、
写真で見るよりずっと存在感があります。
周囲には観光客も多いですが、それでもこの建物の前に立つと、
マカオを代表する景観のひとつだとすぐに実感できます。
聖ポール天主堂は、1582年から1602年にイエズス会士によって建築されました。
当時は、アジアで最大のカトリック教会だったそうです。
当時のカトリック教会は、ヨーロッパ以外の地域でも信者を増やそうとしており、
王族たちが競い合って寄進したともいわれています。
この建物も、そうした時代の宗教的な広がりを背景に築かれた重要な教会でした。
しかし、1835年の台風の時の火災によって焼失してしまい、
現在残されているのは正面のファサードと66の階段だけになってしまいました。
それでも石造りの正面には細かな彫刻が残っており、宗教的な意匠だけでなく、東洋的な要素も感じられます。

この寺院は、日本から追放されたキリスト教徒と現地の職人によって一部建設されたそうで、
ここにも東西文化が重なった背景を見ることができます。
ただの廃墟というより、マカオの歴史そのものを象徴する場所として見ると、より印象が深まります。

聖ドミンゴ教会(St. Dominic’s Church)
住所:マカオTv. de São Domingos, &號 板樟堂前地
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 時間 | 10:00~18:00 |
| 定休日 | 無休 |
| 料金 | 無料 |
聖ドミンゴ教会は、セナド広場周辺を歩いていると自然に目に入ってくる教会です。
やわらかな黄色の外壁と白い装飾が印象的で、にぎやかなエリアの中にありながら、
教会の前に立つと少し落ち着いた空気が流れています。
この教会は、メキシコから来た3人のスペイン人のドミニコ会聖職者により、1587年に設立されました。
もともとは木造建築でしたが、その後、改修が繰り返され、18世紀頃に現在の形であるバロック様式に改修されたとされています。
ヨーロッパとマカオの文化が融合した設計になっている点も、この建物の大きな見どころです。
また、1822年には中国で初のポルトガル新聞「A Abelha da China(The China Bee)」が発刊されたそうです。
宗教施設としてだけではなく、マカオにおける文化発信の拠点のひとつでもあったことが分かります。

内部に入ると、祭壇の中央には聖母子像があり、左右には木や象牙で作られた聖人の像が並んでいます。
華やかな装飾がありつつも、祈りの場らしい静けさがあり、外の賑わいとの対比も印象に残ります。

大堂(Cathedral)
住所:澳門大堂前地1號
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 時間 | 7:30~18:30 |
| 定休日 | 無休 |
| 料金 | 無料 |
大堂は、観光客でにぎわうマカオ中心部にありながら、少し空気がやわらぐような雰囲気を持つ教会です。
この大堂は、イエスの弟子、聖ラザロを祀る教会として、アジアの主教管区の拠点のひとつとして1622年に建設されました。
マカオのカトリック派の中心的な役割を担っており、祭壇の下には16〜17世紀の司教や聖職者が納められているそうです。
最初はレンガ造りの建物でしたが、その後、災害や改修を繰り返し、1937年に現在の姿になったとされています。
現在の建物は、端正で整ったファサードが印象的で、派手すぎない美しさがあります。
内部は厳かな雰囲気があり、外の喧騒から少し離れて静かに見学したい場所です。

モンテの砦(Monte Fort)
住所:澳門大炮台
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 時間 | 7:00~19:00 |
| 定休日 | 無休 |
| 料金 | 無料 |
モンテの砦は、マカオの歴史地区を少し高い場所から見渡せる見晴らしの良い場所です。
モンテの砦は、10,000㎡の台形の丘の上に、1617年から1626年にかけてイエズス会の協力のもとに築かれました。
22門の大砲が海に向けて設置されており、大砲のほかにも、軍部宿舎、井戸、兵器工場、貯蔵庫などがあったそうです。
2年間の攻撃に耐えられるよう設計されていたとされ、当時のマカオにとって重要な防衛拠点でした。
なお、砲門は3方向にあり、中国本土には向いていないとされ、これは中国と戦う意思がなかったことを示しているそうです。
この点は、ポルトガル植民地時代のマカオの立場を考えるうえでも興味深いところです。
現在は緑が多く、砦の上を歩くと風が抜けて気持ちがよく、要塞らしい重みと観光地としての開放感の両方があります。
歴史だけでなく、街を眺める場所としても立ち寄る価値の高いスポットです。

セナド広場(Senado Square)
住所:マカオ半島中心部、民政総署大楼前一帯
セナド広場は、マカオ歴史地区を歩くうえで外せない中心的な場所です。
16世紀から18世紀にかけて、中国人とポルトガル人が会したレアル・セナドがここに面して置かれていたことが、広場の名前の由来です。
現在、レアル・セナドがあった場所には民政総署大楼が存在しています。
つまりこの広場は、単なる観光広場ではなく、
マカオの行政と交流の中心として機能してきた歴史を持っています。
広場の中心には、地球儀を模した噴水が設置されており、噴水池とも呼ばれています。
その周りには、白とグレーの波模様に石畳が敷き詰められており、
これはポルトガルの熟練工の手によって作られたものです。
マカオらしい東西融合の景観をもっとも分かりやすく感じられる場所のひとつで、
朝と夜でも雰囲気が変わります。
観光の途中に何度も通る場所になりやすいので、通過するだけでなく、
少し立ち止まって広場全体を眺めるのがおすすめです。

アクセス
マカオ歴史地区の最寄り都市はマカオ中心部です。
空の玄関口はマカオ国際空港になります。
マカオ国際空港から歴史地区までは、道路状況にもよりますが、車でおおむね20〜30分前後が目安です。
路線バスやタクシーで市内へ向かい、そのあとセナド広場周辺を起点に歩き始めると回りやすいです。
マカオ歴史地区の魅力は、個々の施設を見ることだけではなく、施設と施設のあいだを歩く時間にもあります。
坂道、石畳、教会の前の小さな広場、細い路地など、移動中にも景色の変化が多く、徒歩観光との相性がとても良いエリアです。
聖ポール天主堂跡、聖ドミンゴ教会、大堂、モンテの砦、セナド広場などは比較的まとめて回りやすいです。
一方で、構成資産は30ヵ所あるため、すべてを一日で丁寧に見るのは少し忙しく感じると思います。
2〜3日かけてゆっくり散策すると、街の雰囲気まで含めて楽しみやすいです。
マカオの街を歩いて感じる世界遺産の面白さ
マカオ歴史地区は、巨大な遺跡がひとつだけある世界遺産ではありません。
教会や広場、砦、住宅建築などが街の中に自然に残り、
それらを歩いてつないでいくことで、はじめてこの世界遺産の魅力が見えてきます。
実際に歩いてみると、中国の都市でありながらポルトガルの面影が残る景色が続き、
ほかのアジアの世界遺産とは少し違う面白さがあります。
聖ポール天主堂跡の迫力。
聖ドミンゴ教会の華やかさ。
大堂の静けさ。
モンテの砦から眺める街並み。
セナド広場の石畳の美しさ。
どれも印象が異なり、歩くほどに街の表情が変わっていきます。
マカオ歴史地区には、30ヵ所も該当する場所があります。
そのため、1日だけではすべて回れないと思うので、2〜3日かけてゆっくり散策するのがお勧めです。
世界遺産を巡るというより、世界遺産の街を歩く。
そんな感覚で楽しむと、マカオの魅力がより深く見えてきます。
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