アンコール遺跡群の中でも、規模・歴史・宗教性のすべてにおいて特異な存在感を放つ寺院が
プリヤ・カーン(Preah Khan)です。
アンコール・ワットやアンコール・トムに比べると知名度はやや控えめですが、
実際に訪れると「なぜここまで見応えがある遺跡が比較的静かに見学できるのか」と驚かされます。
本記事では、
歴史背景・宗教的意味・建築的特徴・見どころ・観光情報を網羅的に解説します。
プリヤ・カーン(Preah Khan)という名称は、サンスクリット語で「聖なる剣」を意味します。
この寺院は、12世紀後半、アンコール王朝最盛期の王 ジャヤヴァルマン7世 によって建立されました。
建立の目的は2つ
ジャヤヴァルマン7世は熱心な大乗仏教の信者であり、プリヤ・カーンも仏教寺院として建立されています。
石碑文によると、プリヤ・カーンは単なる寺院ではなく、大乗仏教の僧院(大学)・行政施設・生活空間・
を兼ね備えた巨大宗教都市でした。
当時の居住者数は、僧侶・奉公人・学者・職人で 約10万人にもなります。
環濠:東西 約800m × 南北 約700mで、外周壁内の敷地:約56ヘクタールなどアンコール遺跡群の中でも最大級の寺院。この規模感は、アンコール・ワットとは異なる意味で圧倒的です。
1992年/2004年 ユネスコ文化遺産に登録
カンボジアの北西部、トンレサップ湖北岸のシェムリアップの北側に位置するクメール王朝時代の遺跡群である。
1992年ユネスコの世界危機遺産に登録され、遺跡を中心とし修復に努めてきたが、第二段階として
2004年世界文化遺産に登録されました。
アンコール遺跡の対象となるものは下記になります。
【メインエリア】
【東部エリア】
【北東部エリア】
【北東部郊外エリア】
【北部エリア】
【西部エリア】
【南部郊外エリア】
【南東部郊外エリア】
住所:North of Angkor Thom
| 時間 | 6:00~17:30 |
| 定休日 | 無休 |
*遺跡観光には、アンコール・パス(共通チケット)の携帯が必須になります。
詳しくは、下記を参照してみてください。
参道には、リンガ(シヴァ神の象徴)を模した砂岩彫刻が整然と並び、
寺院が元々ヒンドゥー的要素も内包していたことを物語ります。
周壁には、ガルーダ(神鳥)・足元には踏みつけられたナーガが彫られ、
宇宙秩序と王権の象徴が強く表現されています。
西門はこんな感じです。
西門をくぐると、幾重にも重なる回廊が続き、まるで迷宮のような構造。
3つの穴があいたリンガ台
中央部には、3つの穴が開いたリンガ台・創建当初は観世音菩薩が祀られていたとされる空間があり
現在は、16世紀頃に建立されたストゥーパが残されています。
奥へ進むと、一部は、崩れ去っています。
趣のある首のない座像。
繊細なレリーフがいくつも彫られています。
プリヤ・カーンの白眉とも言えるのが、アプサラのテラスに残る精緻なレリーフ。
アンコール・ワットとは異なる、より人間味のある表情が印象的です。
遺跡を覆い尽くすスアポン(スポン)の巨木も見逃せません。
タ・プロームに引けを取らない迫力があります。
プリヤ・カーン最大の特徴の一つが、2階建ての石造建築の存在。
1階:丸柱・2階:角柱でこの構造はアンコール遺跡群でも極めて珍しく、
建築技術の実験的要素を感じさせます。
東側に位置する第二塔門は、
保存状態が良く、光の入り方も美しいため撮影スポットとしてもおすすめ。
実際に訪れてみると、プリヤ・カーンはアンコール・ワットやタ・プロームの陰に隠れがちな存在でありながら、
その完成度と奥行きは想像をはるかに超えるものでした。
保存状態の良さ、アンコール最大級といわれる圧倒的な規模感、
そして僧院・大学・都市機能を併せ持っていた宗教都市としての重層的な歴史。
どの視点から見ても見応えがあり、静かに歩くだけでクメール王朝の精神世界に引き込まれていきます。
プリヤ・カーンは決して「通好みの遺跡」ではありません。
むしろ、アンコール遺跡群を深く理解するうえで欠かすことのできない必見の一寺院です。
主要遺跡を巡ったあとに訪れれば、
アンコールが単なる巨大寺院群ではなく、
「信仰・学問・都市」が一体となった文明であったことを、より鮮明に実感できるはずです。