インドには2020年現在、
文化遺産30件・自然遺産7件・複合遺産1件、合計38件ものユネスコ世界遺産が登録されています。
その中でも首都デリー周辺は、
ムガール帝国をはじめとするイスラム王朝の遺産が集中する、インド史の重要な舞台です。
今回ご紹介する クトゥブ・ミーナール(Qutub Minar) は、
そのイスラム王朝支配の始まりを象徴する存在。
12世紀、インド最初のイスラム王朝「奴隷王朝」によって築かれたこの塔は、
高さ72.5mを誇る世界一高いミナレットとして知られています。
赤砂岩に刻まれた精緻な装飾、
ヒンドゥー建築とイスラム建築が交錯する空間、
そして後のムガール建築へとつながる歴史の起点――。
本記事では、デリーを代表する世界遺産クトゥブ・ミーナールの
歴史的背景・見どころ・実際に訪れて感じた魅力を、旅人目線で詳しく紹介します。
住所:インド 〒110030 Delhi, New Delhi, Mehrauli, セス・サライ
1993年 ユネスコ文化遺産に登録
| 時間 | 日の出から日没まで |
| 定休日 | 無休 |
| 料金 | 大人:500ルピー |
クトゥブ・ミーナールが建設されたのは、
インド最初のイスラム王朝「奴隷王朝(1206〜1290年)」 の時代。
初代スルタン
クトゥブッディーン・アイバク が、
ヒンドゥー勢力に対する勝利を記念して建設を開始しました。
これは単なる塔ではなく、
イスラム勢力の到来と支配を示す「権力の象徴」 でもありました。
下へ行くほど太く、上へ行くほど細くなる優美なシルエットが特徴です。
イスラム建築特有の幾何学文様が、圧倒的な存在感を放っています。
以前は内部の螺旋階段を使って頂上まで登ることが可能 でした。
しかし、過去に見学中の転落事故が発生したため、
現在は 内部立入は禁止 されています。
クトゥブ・ミーナールの敷地内で、
ひときわ異彩を放つのが 鉄柱(Iron Pillar) です。
制作年代:3〜4世紀(グプタ王朝時代)
高さ:約7m
特徴:鉄の純度が極めて高く、1500年以上ほとんど錆びていない
かつては
「背中越しに触れると幸福になれる」
という言い伝えがありましたが、
現在は保護のため柵が設けられ、触れることはできません。
1188年、アイバクによって建設されたインド最古のモスク です。
破壊されたヒンドゥー教・ジャイナ教寺院の石材を再利用しており、
柱にはヒンドゥー的な植物文様や彫刻が残されています。
イスラム建築とインド的装飾が混在する、
非常に興味深い空間です。
イスラム建築で象徴的な幾何学模様の彫刻。
1310年、
ハルジー朝のスルタン アラウッディーン・ハルジー が
「クトゥブ・ミーナールの2倍の高さ」を目指して建設を開始。
しかし、彼の暗殺により工事は中断され、
現在は 基底部(直径約25m)のみ が残されています。
もし完成していたら、
インド史はまったく違った景観を持っていたかもしれません。
世界一高いミナレットと聞いて想像する以上に、
実物の迫力は圧倒的です。
青空を突き刺すように伸びる姿を見た瞬間、
思わず ドラゴンボールの「カリン塔」 を連想してしまいました。
写真では伝わらないスケール感は、
ぜひ現地で体感してほしいポイントです。
後の時代に築かれた世界遺産と比べると、装飾や構成は素朴に見えるかもしれません。
▶︎ フマユーン廟(ムガール建築の完成形)
▶︎ ラール・キラー完全ガイド(ムガール帝国の象徴的城塞)
しかし、その質実な姿こそが、
デリーに残る世界遺産群の“原点”であることを雄弁に物語っています。
クトゥブ・ミーナールは、
単に「世界一高いミナレット」という記録を持つ建造物ではありません。
そこに立つと、インドにおけるイスラム王朝支配の始まり、
そしてヒンドゥー文化とイスラム文化が交錯していく歴史の流れを、
肌で感じることができます。
デリー観光では、
クトゥブ・ミーナール → フマユーン廟 → ラール・キラー
という順で巡ることで、
イスラム王朝の成立からムガール帝国の完成へと至る歴史を、
一本の物語として体感することができるでしょう。
写真や映像では伝わらない圧倒的な高さと存在感は、
ぜひ現地でこそ味わってほしいもの。
デリーに残る世界遺産巡りの第一歩として、
クトゥブ・ミーナールは間違いなく外せない場所です。