インドには2020年現在、
文化遺産30件・自然遺産7件・複合遺産1件、合計38件ものユネスコ世界遺産が登録されています。
その中でも首都デリー周辺は、
ムガール帝国をはじめとするイスラム王朝の遺産が集中する、インド史の重要な舞台です。
今回ご紹介する ラール・キラー(Lal Qila) は、
17世紀、ムガル帝国最盛期を築いた皇帝シャー・ジャハーンによって造営された王城。
赤砂岩で築かれた壮大な城塞は「レッド・フォート」の名でも知られ、
インド独立後は国家の象徴としても重要な役割を担ってきました。
本記事では、
ラール・キラーの歴史的背景から見どころ、建築の特徴、実際に歩いて感じた見学ポイントまで、
世界遺産を旅する視点で詳しく解説します。
▶︎ フマユーン廟 完全ガイド|タージ・マハールへとつながるムガル建築の原点
https://weekend-abroad-travelers.com/asia-oceania/india/delhi-sightseeing/humayuns-tomb/
▶︎ クトゥブ・ミーナールとその建造物群 完全ガイド|インド最初のイスラム王朝が築いた世界遺産
https://weekend-abroad-travelers.com/asia-oceania/india/delhi-sightseeing/qutub-minar/
住所:Netaji Subhash Marg, Lal Qila, Chandni Chowk, New Delhi, Delhi 110006 インド
2007年 ユネスコ文化遺産に登録
| 時間 | 日の出~日没 |
| 定休日 | 月曜日(1/22~1/26、8/5~8/15) |
| 料金 | 500ルピー |
ラール・キラーは、
1639~1648年にかけて、第5代皇帝シャー・ジャハーンによって建設されました。
皇帝は都をアーグラからデリーへ移し、
この地に新都「シャージャハーナーバード」を築きます。
ラール・キラーは、その中心に据えられた王宮兼要塞でした。
しかし18世紀以降、ムガル帝国は衰退。
1857年のインド大反乱(セポイの乱)では、
反乱軍が皇帝を擁立したことでイギリス軍の攻撃対象となり、
宮殿群は略奪・破壊を受け、多くの建物が失われました。
現在残るのは当時の一部のみですが、
それでもムガル帝国の威光を十分に感じさせる規模と完成度を誇ります。
ラール・キラー最大の特徴は、
赤砂岩で築かれた城壁。
総延長は約2kmにも及び、
この赤い外観から英語では
Red Fort(レッド・フォート)と呼ばれています。
城内の建築様式は、
イスラム建築を基調に、ヒンドゥー建築の要素を取り入れた
ムガル建築特有の折衷様式が随所に見られます。
柱に支えられたドーム型の屋根は、チャトリー(小亭)と呼ばれていて、インド独特の建築様式です。
ラール・キラーの正門で、現在の入場口。
両脇には高さ約33mの八角形の門塔がそびえ、
王城の威厳を強く印象づけます。
門をくぐると、
かつて宮廷女性たちが利用していたという
屋根付きのバザール通りが続きます。
バザールの先にある中門で、
ここからが有料エリア。
儀礼の際には音楽が奏でられ、
皇帝の出入りを告げる役割を果たしていました。
表と裏で印象が大きく異なるのも見どころです。
裏側は、こんな感じで、白くは塗られていません。
毎日行われた公開謁見の場。
民衆が集まり、皇帝に直接訴えを届けた
政治の中枢空間です。
奥には、シャー・ジャハーンが座った玉座が残っています。
かつては宝石で装飾されていたと伝えられています。
外国使節や高官を迎えた特別な謁見の間。
ここには、かつて有名な「クジャクの玉座」が置かれていました。
天井には、
「もし地上に楽園があるならば、それはここなり」
という刻文が残されており、
アーグラ城やタージ・マハールとも共通する
シャー・ジャハーン美学を感じさせます。
アグラ城やタージマハルとも共通する感じです。
植物のレリーフがアクセントになっています。
「彩りの間」と呼ばれる後宮エリア。
かつては鮮やかな装飾が施され、
水路や噴水を備えた、
酷暑のデリーでも快適に過ごせる空間でした。
赤砂岩の城壁に囲まれたラール・キラーは、
ムガル帝国が築いた都デリーの中核として、
政治・宗教・文化のすべてが集約された場所でした。
数多くの建物が失われた現在でも、
ディーワーネ・アームやディーワーネ・カースに立てば、
皇帝がこの地から国を統べていた往時の光景が、
自然と目に浮かんできます。
フマユーン廟、クトゥブ・ミーナール、ジャマー・マスジッドとあわせて巡ることで、
デリーがなぜ「イスラム王朝の都」と呼ばれるのかが、
より立体的に理解できるはずです。
デリー観光を計画するなら、
ラール・キラーはその出発点として、
必ず訪れておきたい世界遺産と言えるでしょう。